「食の都庄内」を支える庄内人 vol.1


旅館 坂本屋

当主

石塚亮さん



日本海を臨む鶴岡市三瀬の地にある木造りの宿「坂本屋」。

江戸時代享保年間からの伝統と、現代の多彩なニーズを見据える

旅館坂本屋当主石塚亮さんから庄内の食への思いを語っていただきました。


――お客様へのおもてなしとして、庄内の食材を探求する姿勢。
「ひと」が中心の料理、
「ひと」が中心のこれからの庄内を説く。
届いた箱の中身に坂本屋さんが選んだ「庄内」が存在する「坂本屋ふるさと便」
坂本屋では、「ふるさと便」というものをしています。これは、ただ季節の品物を希望の値段分送るのではなく、坂本屋で食べていただいたお米、季節の地魚、魚に合った野菜などをわたし自身がお客様のことを考えながら選びます。庄内を訪れたお客様は、それぞれに庄内の情景を思い描いております。その情景を大事にし、おそらくはその情景のひとつである「坂本屋の当主」が選んだ庄内の食材として、お客様の出身地やお求めいただいた季節を考慮し、喜ばれるものはなにかを充分に吟味します。旅先の旅館の当主という顔の見えるひとが介在することにより、お客様が届いた食材を食べて庄内の情景や香りを思い起こし、長く庄内を忘れずにいてくれるのだと思います。
若い人には若い人なりの素材の解釈があり、たとえば、トマトに対して「野菜ではなくこの甘さはフルーツである」と、従来にはない新しい価値を見出していける。そして、いくら若いとは言っても、庄内の人間には庄内の歴史や思想や文化が必ず潜在しています。 彼らが、昔ながらの庄内の素材に現代的な新しい価値やニーズを組み合わせることで、わたしたちの世代にはない情景を作り出し、多彩なお客様と彼らにしかできないコミュニケーションをしていってくれればよいと思っています。
品物をただ売るだけでは、買うお客様にはなんの感慨も情感もわき起こらないでしょう。「庄内の○○はおいしかったね、次は○○県のものはどうかな」と、ものと金中心の購買意欲にしかならない。それでは、庄内のものである必要はないのです。しかし、「あのひとが自分を思って選んだ庄内の旬のものが届く」としたとき、届くものには「選ぶひと」と「受け取るひと」という「ひととひととのつながり」が付加されます。 「食材の旬を知っている坂本屋のひと」と「坂本屋から選んでほしいひと」との絆を中心に食材を送ることで、旬の食材においしさと庄内の情景が生まれると考えています。また、送る品物を選ぶひとが次世代の若い人になれば、お客様は若い人になると思います。
若い人には若い人なりの素材の解釈があり、たとえば、トマトに対して「野菜ではなくこの甘さはフルーツである」と、従来にはない新しい価値を見出していける。そして、いくら若いとは言っても、庄内の人間には庄内の歴史や思想や文化が必ず潜在しています。 彼らが、昔ながらの庄内の素材に現代的な新しい価値やニーズを組み合わせることで、わたしたちの世代にはない情景を作り出し、多彩なお客様と彼らにしかできないコミュニケーションをしていってくれればよいと思っています。
坂本屋 店内


「ひと」の数だけ味がある。
作り手の付加価値をつけられる庄内人のための庄内料理を。
そして、庄内の料理を楽しみにやってくる観光客。
庄内という地は、他の地域のひとからよく食材そのものが褒められます。「水がおいしい」「酒がおいしい」「米がおいしい」。しかし、そこに料理の名前は出てこないのです。
例えば春は山菜。庄内の山菜は雪の下でじっと寒さに耐えながら栄養を蓄え、雪が溶けると一気に伸びるため、やわらかくて甘くおいしいです。夏は自分の畑で採れるナスやトマトなどが新鮮でおいしいですよ。
庄内は食材が豊富なために、庄内の料理というものがなかなか思い浮かばない。 そもそも料理の意味というのは、第一義「目の前のものを片づける」という意で、「これらをどう料理してやろうか」と使うのだが、昨今では第二義「食べるための料理」という意味が先行してしまっています。 料理講習会などでも先生が教える味、たとえば「大さじ一杯」とか「何cc」とかいうマニュアルをただ鵜吞みにするのでは、現代日本の画一的な料理であって、作り手の料理ではなくなってしまいます。
実際に料理を作りたい人が自分の生活や体質、好みにあった味にアレンジできる、また、目の前の食材からなにを作ろうかと自由自在に想像ができる、そういう作り手のさじ加減で料理が作れるようになる料理講習会が必要であると思います。
庄内に住んでいる人たちが、自分たちの住んでいる地域の素材から作り出したものこそが庄内のひとのための料理であり、庄内の料理になるものだと思います。

まず、食べてもらうためには。
料理人として大事にしていることは、味付けはもちろんだが、
「食べてもらうものを作る」こと。
料理人として、味付けというのは基本であって、実は料理を食べやすくするのも仕事のうちであると考えています。 たとえば、さかなには骨があるから食べないというひとがいる。また、大きくて食べにくい、手が汚れるというひともいる。だったら骨を抜いてみよう、食べ易い大きさにしてみようと、食べるひとのことを考え、骨を取って、食べやすい大きさ、形にしてみたところお客さんは食べてくれるようになりました。 このように私にとって食べてもらうということは、食い手の希望に合わせることになります。食い手の希望によりそったとき、料理人が成長し、料理人を考えた素材作りをし始めた時、生産者も育つ。その両者(料理人と生産者)がコミュニケーションをとれるようになっていくと非常に素晴らしいものが出来上がると思います。 食い手、料理人、生産者、お互いにひととひととしての情感を伴ったコミュニケーションが生まれることで、ここ庄内に住む人のための料理というものも生まれていくのではないかと思います。

坂本屋

石塚亮 Ishiduka Ryo

旅館 坂本屋 当主

〒999-7463
住所:鶴岡市大字三瀬己-91
電話:(0235)73-2003
営業時間
10:00~15:00
(夜は18:00から要予約)
e-mail:sakamoto@dream.ocn.ne.jp

今回お話を伺った石塚さんは庄内の食材や藤沢周平文学への造詣が深く、その知識量は以前に週刊「藤沢周平の世界」に連載欄を持っていたほど。 「何事も鵜呑みにはせずに、まずは「本当にそうなのか?」と検証するところから、食材の謎は明かされる。」と語る石塚さんの姿勢。それは、庄内に住む私に、料理とは何かを、決して押し付けることなく、静かに考えさせられるものでした。
(取材日:2010年1月21日)

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