長南光さん

「食の都庄内」を支える庄内人 vol.2


日本料理さくら亭

社長

本間公輝さん



10代の頃、世界各国を周る貨物船で調理に携わっていたという異色の経歴を持つ本間さん。
世界各地の食材に触れ、「適地適作」で作られた食材の美味しさを実感されたそうです。
昨年からは、酒田の教祖料理を「北前料理」として広めようと活躍中。その活動に込めた思いを伺いました。


郷土料理は、その地域の歴史や文化の産物。
長年受け継がれてきた郷土料理こそ真の名物だと思うんです。
─「北前料理」を作ろうとしたきっかけを教えてください。
さくら亭 御膳

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「酒田の名物料理を開発してほしい」と度々言われていたんです。
その時、「物珍しさからブームになるようなものではなく、長く残っていくものがいいのではないか」と思いました。そう考えたら、身近にある郷土料理が頭に浮かんだんです。
この辺りでは、酒田まつりのとき、鱒やそうめんの餡掛けを食べます。いろいろ聞いてみると、庄内以外では食べないらしいんですね。じゃぁ、何で庄内に餡掛け料理が多いんだろう、と調べてみると、北前船の影響を強く受けていることが分かったんです。餡の材料である砂糖と葛粉は、北前船で運ばれてきたもので、当時、とても高価な ものだったんですね。
それで、餡掛け料理は、お祭りなど特別な時のご馳走として残ったと言われています。また、当時は、餡が多ければ多いほど豪華だとされ、「餡をたくさんかけられる」=「羽振りがよい」ことから、商屋は競って餡の多い料理を料理店に作らせ、その繁盛振りを世間にアピールした、と言われています。おもしろいでしょ(笑)。そういう文化や歴史のある郷土料理こそ酒田の名物になるんじゃないか、と思いました。
そこで、調理師調桜会と「北前を考える会」が協力し合い、郷土料理を「北前料理」という名前で広めていこう、ということになったんです。


料理のおいしさは、「いつ、どこで食べるか」で変わってくる。
旬のものをその土地で食べる。それに勝るおいしいものはないんですね。
―庄内の郷土料理の魅力とは、どんなところにあるとお考えですか?
さくら亭 店内

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郷土料理の魅力は、季節を食べることだと思っているんです。旬のものを食べるということですね。それと、もう1つ意味があるんです。それは、季節そのものが料理の要素だということ。
例えば、土用の丑のうなぎ。冷房の効いた涼しいところで食べるより、暑いところでダラダラ汗をかいて食べる方が格段においしい。なぜかというと、汗をかいて体から塩分が失われるのと、暑さで体力が消耗するからなんですね。私が昔働いてた酒田のお店の主人は、店に冷房がないことを自慢してました。夏の暑さも料理の一部、と考えていたからなんです。
今の時代は、そんなことしたらお客さんが入らないから、なかなかできないですけどね(笑)。 その土地で採れた旬の物を、その土地で食べるとおいしい、というのは、単に食材が新鮮だからだけでなく、その地域の気温や湿度等の中で食べると一番おいしい様に味付けされているからです。季節を食べる、というのはそういうことなんですね。 ただ、最近は、食べ物の旬がなくなった、と言われています。生産技術や流通の発達で、季節、場所を問わず大抵の食材が手に入るようになった。でも、幸い、庄内には、まだ「旬を食べる」習慣が残っていると思うんです。いつでも、どこの物でも、食べたい物が食べられる。そんな中で、今も庄内に息づいている郷土料理は、胸を張って「おいしい」と言える料理なのではないでしょうか。

酒田で育まれた誇り高き「北前料理」を地元の人達に知ってほしい。
―庄内を食の都として盛り上げて行くために、これから本間さんがやっていきたいことは何ですか?

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北前船が寄港したところには、それぞれ「その土地ならではの四季折々の北前料理」というのがあるはずです。
例えば、新潟や秋田とも連携して、将来は、それぞれの地域の北前料理を食べるツアーができたら、と思っています。そして、一年を通じてたくさんの人が庄内を訪れ、庄内の名所を観光して、郷土料理を楽しむ。そんな活気あふれる街になったらいいですね。
それには、まず、地元に北前料理を広めていくことが大切だと考えています。地元の人達が普段から北前料理を食べていて、その文化も知っている。地域に北前料理が、ちゃんと根付いている。
例えば、地元のスーパーのお惣菜コーナーに北前料理が並ぶ程、身近なものになったら、と思います。 地元のことは以外に知らないことが多いと思うんです。でも、知れば知るほど、その魅力が分かってきて、自分の住んでいるところがもっと好きになる。それが、地元を誇りに思う、ということなんだと思うんです。そういった気持ちが、庄内を元気にしていく一歩になるのではないでしょうか。そして、「北前料理」がそのきっかけになれば嬉しいですね。


本間公輝 homma koki

日本料理 さくら亭 社長

住所:酒田市中町2丁目3-32
電話:(0234)24-1665
営業時間
昼11:30~14:00
夜17:30~21:00

※「北前料理」 酒田の郷土料理をブランド化しようとすすめているもの。 酒田の代表的な郷土料理として、そうめんのあんかけ、 ハタハタの田楽、むき蕎麦などがあるが、これらは、江戸時代、 北前船が運んできた上方文化と酒田の文化との融合によって もたらされたと考えられている。
酒田の有志6人による 「北前を考える会」と県調理師調桜会が、2009年から 北前船の歴史や食文化などを調べ、試食会を開くなどして 「北前料理」のブランド化に取組んでいる。
(取材日:2010年1月21日)

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