庄内のおいしい食材 vol.29

伝九郎柿

でんくろうがき

季節「秋」


数多く出回っている庄内柿よりも甘みが強く、とろけるような味わいの柿が、かつて庄内地方一円で栽培されていました。その柿の名は"伝九郎柿"です。一時生産が途絶えていましたが、さまざまなメディアで紹介され、今では手に入らないほどの人気の品になっています。
この柿は、江戸時代にお伊勢参りをしていた人々が、現在の滋賀県あたりから持ち込んできたのではないかといわれています。通常の焼酎を使った渋抜きでは上手く渋が抜けないため、お湯を使った湯ざわしという方法で渋抜きされます。この脱渋方法により表面が酸化して、黒くなりやすくなってしまいますが、皮をむくと果肉はきれいな濃い橙色となります。肉質はスプーンですくえるほどの軟らかさとなり、まるでマンゴーやパパイヤといった南国フルーツのような食感となります。コクのある独特な甘さは、よく黒砂糖の甘さに例えられます。
藤島地区長沼で古くから伝えられてきたうたのひとつに「春孟宗、夏すもも、秋伝九郎さわし柿」という言葉がありますが、その長沼の三大名物を復活させようと平成8年に"長沼三大名物伝九郎の会"が立ち上げられました。この会では栽培農家を募り、伝九郎柿を復活させるとともに、次世代にも広めていこうとブランド化に力を入れています。
伝九郎柿の樹高は10m以上、高いものでは20mほどにもなります。そのため、10月中旬から始まる収穫作業は危険を伴います。矢筈と呼ばれる先端が二股になった6mほどの竹の棒を使い、枝を挟んで柿ひとつずつをひねり取ります。伝九郎柿はみぞれの降る頃が一番おいしいと言われています。みぞれの降る中、高い木の上で重い竹ざおを持ち上げるのはたいへんな作業です。そんな収穫のしにくさも、伝九郎柿が栽培されなくなった理由のひとつだと思われます。また、脱渋方法である湯ざわしにもコツが必要で、温度などの条件が違えばすぐに見栄えに影響してしまいます。
作業の様子
左:アルコール脱渋 右:湯ざわし

左:アルコール脱渋 右:湯ざわし

幻の伝九郎柿 箱入り

幻の伝九郎柿 箱入り


地元農家の代表である坂善彦さんは、地元の子どもたちにも伝九郎柿のおいしさを知ってほしいと、柿もぎや湯ざわしの指導に参加しています。昔は身近だった伝九郎柿が珍しいものになった今、坂さんのお話は興味深く、子どもたちから次々に質問が出されるそうです。物が豊富になり、様々な美味しいものを知っている子どもたちに、伝九郎のおいしさを認識してもらうのは難しい、と坂さんはおっしゃいます。地元長沼小学校には伝九郎柿の木が昔からあり、校内で湯ざわししたものを給食で味わっています。近い将来、名実ともに特産になった伝九郎柿を誇らしげに紹介する子どもたちの顔がみえるようです。
さらに、坂さんは伝九郎柿の味を多くの人に広めたいと、食の都庄内親善大使である奥田シェフのもとを訪れ、伝九郎柿の利用をお願いしました。伝九郎柿の素材の味が活かされたスイーツを食べた時、坂さんは"やられた"と思ったそうです。さらなる伝九郎柿の可能性を感じた坂さんは、今年は東京進出だ!と意気込んでいます。坂さんは地元庄内を思う気持ちを語ってくれました。『庄内平野は最上川や赤川などが流れ込む肥沃な大地で、果樹栽培にとても向いている。また、四季がはっきりしている上、寒暖の差があり、年間を通して吹く湿った風や朝露などが農作物のうまみを一層増してくれる。庄内は変化に富んだ自然がもたらす"食の宝庫"といえる。伝九郎柿もそのひとつ。大いに宣伝して庄内が盛り上がっていくことを期待している。』
「伝九郎柿」の主な取扱店
ぽっぽの湯 農産物直売所
住所:鶴岡市長沼字宮前266-1
TEL:(0235)64-4126
営業時間:6:00~21:00
定休日:第2木曜、6・11月臨時休業有



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