「ひと」Cheer!! 〜 「食の都庄内」を舞台に輝く人からあなたに〜

<Cheer !!〜「食の都庄内」を舞台に輝く人からあなたに〜>

vol.19 –グリーンストア株式会社 常務取締役 高橋麻依子さん

「食の都庄内」を支える若手料理人やスタッフ、生産者たちの人となりや想いを掘り下げ、庄内の“食”に関わる仕事の魅力をお伝えするシリーズ<Cheer !!(チアー)〜「食の都庄内」を舞台に輝く人からあなたに〜>。今回は、遊佐町にあるスーパーマーケット「グリーンストア」常務取締役の高橋麻依子さんにお話を伺いました。

1店舗のみのローカルスーパーながら、いまでは看板商品のフルーツサンドを求めて各地からお客さんがやってくる人気店に。バラエティ豊かな総菜に丼、全国各地のこだわり商品など、選ぶ楽しさが詰まった店内はどうやって作られてきたのか? そのきっかけや今後の目標をお聞きしました。

※2025年10 月に取材した内容となります。

 

◇まるで食のセレクトショップ。全国から集めたわくわくする商品の数々

ローカルスーパーとは思えない品揃え。個性的なイラストが描かれたパッケージの商品が多い。

グリーンストアに足を踏み入れると、一見、野菜が並ぶ普通のスーパーマーケット。ところが奥に進むと、手作り総菜やフルーツサンド、全国各地のこだわり商品などが手書きのPOPとともに現れ、まるで食のセレクトショップのよう。

人気のフルーツサンドは、イチゴやブドウ、メロン、柿など「そんなに?」と驚くほど大ぶりの旬のフルーツを、たっぷりのクリームとふわふわのパンで挟んだもの。高橋さんが「自分の推し棚」と呼ぶ陳列棚には、カラフルなパッケージのナッツ&ドライフルーツ、フライドポテトにあう北海道産塩、とぼけたイラストが描かれたオーツミルク、白いカレーなどなど、気分が上がる商品が並んで、見ているだけで飽きない。

お店のインスタグラムのフォロワーは2.3万人。地元客にも愛されながら、山形県の内陸はもとより、全国からやってくる観光客のお目当ての場所にもなっている。

 

◇遊佐ストアからグリーンストアへ。オープンから今年で30周年を迎える

グリーンストアの外観。現在の店舗は2019年に移転リニューアル。

グリーンストアの前身「遊佐ストア」は、高橋さんの祖父が1962(昭和37)年8月に創業した鮮魚店だった。その後スーパーへと発展し、本店以外にも八幡や余目、本楯、藤島と庄内各地に支店を置いていた。幼かった高橋さんの記憶には、店先のイベントで出ていたエアートランポリンが印象に残っているという。

1995(平成7)年、高橋さんの父が独立して引き継ぐことになった。店名も「グリーンストア」となり、ちょうど2025年で開店30周年を迎えたところだ。現在は父・谷地徹さんが会長、母・由美子さんが社長を務め、長女である高橋さんが常務取締役、長男の谷地宏康さんが専務取締役に就き、総勢35人のスタッフが働いている。

 

◇母親のごはんが食の原点。家業への転職で総菜づくりにかかわることに

大学時代、友人と撮影した1枚。左から2番目が高橋さん。

高橋さんが幼いころから、両親は休みもないほど忙しく働いていた。それでも、部活動のバスケに打ち込んでいた高橋さんが腹ペコで帰宅すると、家では母親のごはんが待っていた。「食べることが好き」という高橋さんの原点が母の味にあった。
「母は朝ごはんを作ってから仕事に行き、仕事を終えて帰宅してから夜ごはんもしっかり作って。栄養面もしっかり考えた食事は、調味料などもこだわって作ってくれていたそうです。いま子供4人を育てている私も食事を作ってはいるものの、なかなか毎日そこまですることは難しい。大変だったのにすごいなと尊敬しています。」

母から栄養士になることを勧められ、酒田商業高校から大妻女子大学家政学部へ進学。そのときは遊佐へ戻るかどうかは深く考えていなかった。大学卒業後は酒田市内にある企業の飲食部門で3年ほど働き、その後アパレル店員に転職したが、家業の経理を担っていた祖母が体調を崩したことがきっかけで2013年にグリーンストアへ入社した。子育てと両立しながら事務仕事に従事していたが、そのうち人手を補うために陳列や調理を手伝い始めた。
「煮物や揚げものなど、それぞれ担当していたスタッフが離職するときにレシピを引き継がないと、と思って。それから総菜を作ることが増えていきました。」

 

◇グリーンストアの危機を救い、高橋さんの意識を変えたフルーツサンド

まるまる1個を使ったミカン、見た目に違わずずっしり重いメロンなど、ボリュームと味の確かさが人気。

グリーンストアがいまのように大きく変わったのは、2019年の移転リニューアルがきっかけだった。店は新しくなったものの、商品構成は手作り総菜を売りにしていたころのまま。店舗面積を小さくしたことも相まって売り上げは減少した。

危機的状況の中で、大学を卒業して他社のスーパーで働き始めたばかりの長男・谷地宏康さんを呼び戻した。旧店舗で一時期作っていたフルーツサンドに目が留まった。スタッフとお客からの評判は良かったが、現在の半分ほどの厚みでも手数がかかりメニューから消滅していた一品。「お客様からのリクエストとヒット商品を生む必要性から、フルーツサンドの復活を試行錯誤しながら担ってくれたのが彼でした。少しずつ店に並べていたら「フルーツサンドはいつ出ますか?」と聞かれるように。インスタグラムで今日の販売数などを投稿していたら、次第に話題になっていったんです。」

コロナ禍で外食が難しくなる中、フルーツサンドを海や山に持って行って外で食べる、というムーブが起きた。「知り合いの間で人気だからと内陸からわざわざ買いに来て、写真をインスタに載せてくれて。今度はそれを見た友達がやってきて…とつながっていって、そうやって商圏が広がっていきました。」

いまや、一日に作るフルーツサンドの量は平均400個、多い時は1,000個にもなる。羽田空港第2ターミナルビルのショップ「和蔵場」にも、毎日40個のフルーツサンドを卸している。

 

 

POPは高橋さんが書いている。

それまではお客に地元のお年寄りが多かったが、フルーツサンド効果で若い家族連れが目立つようになった。もともと、かわいいパッケージや目を引く商品が好きだった高橋さん。ローカルスーパーでは地元客を相手にしたなじみの商品を並べることが多いが、そうではない、見た目でも楽しめる品揃えでもいいじゃないか!と意識が変わったという。

ある日、有名な群馬県の下仁田納豆の社長からインスタグラムのDMが送られてきた。どうやら面白い店があると思ったらしく「うちの納豆扱ってくれませんか?」というお誘いだった。高橋さんが「ぜひ置かせてください!」と反応したところ、そこから知り合いを紹介してもらい、さまざまな縁がつながっていった。東京のセレクトショップのオーナーから、棚づくりのアドバイスをもらったこともある。空いていた棚を埋めるアイディアを尋ねたら、ものすごい数の商品を教えてくれた。

そのうち、インスタグラムで気になる商品を見かけたら「小さなスーパーですが、販売させてもらうことはできますか?」と自らメッセージを送るようになった。
「問い合わせたら意外と大丈夫だったという経験を重ねて、これもいいな、あれもいいなって、どんどん商品が増えていって、売り場が華やかになっていきました。作業のことを何も考えなかったので、取引先が増えて伝票作業が大変だと思います。」

 

◇「そのスタッフしか作れない」総菜で、毎日来ても飽きない品揃えに

あまた並ぶお総菜に「オリジナル」のラベルがあったら、一期一会。

フルーツサンドにチーズケーキ、揚げ物や焼き魚、丼、サラダなどの調理関係は、100種類以上が店に並んでいるという。調理を担うスタッフは総勢17人ほど。商品によって作る人が決まっているので、スタッフのシフトによって、並ぶ商品はいつも違ってくる。

さらに「今日は寒いからおでん」「暑いからさっぱりしたもの」「売り場にある旬のものを使って」と、臨機応変にメニューが決まる。スタッフがそのときに食べたいものを作った「オリジナル総菜」といった商品もある。みんなが同じ仕事をこなせるマニュアル化で効率が求められる時代に、スタッフが食を楽しむことで個性あふれる品揃えになっている。

「毎日来てくれるお客さんもいるので、毎日同じメニューだと面白くないと思って。休日に食べておいしかった味を再現するスタッフもいます。私たちが食べたいものを作っている感じですね。」

 

◇お客様の声を励みに。スタッフも居心地のいい店にしていきたい

高橋さんの「推し棚」。

インスタグラムで届くメッセージや移動販売でお客さまからいただいた言葉が、高橋さんにとって仕事のやりがいになっている。「直接お客さんの声が聞けて、自分が作った商品をおいしいと言ってもらったら、うれしいですよね。お客さんから「広島で買ったお土産が遊佐で売っているなんてびっくりした」「この海外土産がおいしいからおすすめです!」と話しかけていただくなど、コミュニケーションのきっかけにもなっています。」

スタッフ個々が自分の持ち場に集中していた以前と比べて、横の連携が取れて現場の雰囲気が良くなってきたとも感じている。「限られた人数でも、創意工夫してやってくれています。それがうれしい。大手スーパーではない単店だからこそ、自由に売り場を作れるのが強み。スタッフがずっと働きたいと思ってもらえる店でありたい。」

 
◇「いま」という貴重な時間を大切に、将来へつなげてほしい

店先にある自販機。お店のオリジナルグッズを販売しているので、ぜひチェックしてほしい。

グリーンストアには、高校生がアルバイトにやってくる。自身が高校生だったころを振り返ると、今の若者は驚くほどしっかりした子が多いとも感じる。

「私は大学で栄養士の勉強をしていましたが、部活動もしていたし、写真撮影が好きなので雑誌で見たカフェや喫茶店に行ったり、東京をひとりで散策しておいしいものを食べたりしていました。高品質な商品を扱うスーパーや韓国料理屋でバイトもしていました。一方で家では寝てばかりいたので、もう少し勉強もがんばればよかったと思っています。たくさんの経験をさせてもらった4年間でしたが、本当にあっという間。今のこの時間は「いま」しかないから、勉強もそうですが、やりたいことを精一杯やった方がいい。すべてのことが経験になるので、必ず何かに活きてくると思います。今となっては、もっとやっておきたかったことがたくさんあるので、とにかく今を大切にしてください!」


【店舗情報】
店舗名: グリーンストア
場所:山形県飽海郡遊佐町遊佐字京田90-1
営業時間:9:30~19:30
定休日:1/1~3
TEL:0234-72-3111
インスタグラム:@greenstore3111
 
 

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