「ひと」Cheer!! 〜 「食の都庄内」を舞台に輝く人からあなたに〜

<Cheer !!〜「食の都庄内」を舞台に輝く人からあなたに〜>

vol.2-伝説の“接客の達人”鈴木新菜&ホテルリッチ&ガーデン酒田 山田圭介

「食の都庄内」を支える若手料理人やスタッフ、生産者たちの人となりや想いを掘り下げ、庄内の“食”に関わる仕事の魅力をお伝えするシリーズ、<Cheer !!(チアー)〜「食の都庄内」を舞台に輝く人からあなたに〜>。
第二弾である今回お話を伺うのは、世代の違う二人のサービスマン・鈴木新菜さんと山田圭介さんです。
 
鈴木さんは、庄内きっての老舗フレンチレストラン「ル・ポットフー」において、伝説の“接客の達人”として知られる方。そして山田さんは、酒田市中心地にて美しい景色と地元の旬の味覚を楽しめる「ホテルリッチ&ガーデン酒田」にて現役で接客をするほか、アシスタントマネージャーとしてスタッフの教育も任されています。
今回は、そんな“接客のプロ”のお二人に、サービスマンとして働くことになったきっかけや、仕事をする上でのこだわりなどについて伺いました。
 
※2021年11月に取材した内容となります。


 
◇来る人を“別世界”へと誘う伝説の接客
鈴木さんは1940年酒田市生まれ。実家は農家で、三人姉妹の長女として育った。中学を卒業後、家業を継ぐため茨城県にある農業の専修学校「日本国民高等学校(現日本農業実践学園)へと入学。卒業後は家業を手伝い、21歳の時結婚。日々家事に育児に農作業に、サービス業とは無縁の生活をしていたという。
 
転機が訪れたのは35歳の頃。かねてよりお世話になっていた方から当時ル・ポットフーが入っていたホテル「酒田東急イン」で結婚式の花嫁の介添人をやってもらえないかと頼まれたのだ。ここから、農業とホテルという、異色の“二足の草鞋”生活がスタートする。
 
しばらくした後、ル・ポットフーの初代支配人である佐藤久一さんからレストランの方も手伝って欲しいと声がかかり、最終的にレストランに専念。48歳でお店を辞めるまで、予約席は全て鈴木さんが仕切っていたという。
 
ホテルで働き始めて5年目にパートから正社員へと登用された鈴木さんは、真っ先に「ユニフォームではなく私服で接客させて欲しい」と申し出た。というのも、ル・ポットフーにワクワクした気持ちで訪れるお客様を迎える上で、いかにも宴会場のような格好ではなく自分でその時その時に合わせて考えた“衣装”でもてなすことで、まるで別世界にいるような気分を味わって欲しいと考えたからだった。当時の写真を拝見すると、そこには“貴婦人”という言葉がぴったりな鈴木さんの姿が写っていた。
 
「衣装に袖を通すことで、自分自身もスイッチを切り替えていたんです。」
鈴木さんはこう語る。

鈴木さん現役時代のお写真(左から鈴木さん、太田政宏シェフ、阿川佐和子さん、佐藤久一さん)

接客する上でのこだわりは服装だけにとどまらない。例えばシルバーを並べる際も、きっちりテーブルマナーに従うのではなく、まず自分が椅子に座ってみて、お客様の手の位置に被らない場所に置く。テーブルの上に飾るお花も、会話をする上で目線を遮らない高さを意識して自分で生けたという。やるからには徹底的にお客様を楽しませたい。そんな鈴木さんに会うために全国各地からル・ポットフーに足を運んだ方も多く存在した。そのことは、鈴木さんの退職後しばらくの間、毎日のようにル・ポットフー時代のお客様から手紙や花が自宅に送られてきたというエピソードからも容易に想像できた。

◇サービスとは、「演じる」こと

山田さんは1993年酒田市生まれ。旧酒田北高等学校(現酒田光陵高等学校)を卒業後すぐ、東京で不動産会社の営業として働く。人と話すのが好きだったので営業の仕事は楽しかったが、20歳の時トム・クルーズ主演の映画「カクテル」を見てバーテンダーになりたいと思い立ち、すぐに勤めていた会社を辞めて池袋のバーでアルバイトを始めた。2年ほどオーセンティックなバーで働いたのち、バーの店長に誘われ今度はダイニングバーで働くことに。24歳で副店長に抜擢されるが、仕事も一通りできるようになりひと段落ついたことや、つきあっていた女性が地元にいて遠距離であったことなども重なり、徐々に地元酒田へ帰ることを意識し始める。
 
「東京でやりたいことは全部やりきった。東京にはたまに遊びに行ければいいので、地元で仕事をしようと思ったんです。」
 
こうして山田さんは、酒田へ戻ることを決意した。
 
Uターン後は、ハローワークで就職活動を開始。お酒の知識を活かしてバーで働くことも考えたが、これまでカジュアルなお店で働いていたため、せっかくならば“接客の最上級”というイメージがあったホテルで働いてみたいと思い、ホテルリッチ&ガーデン酒田へと就職した。
入社してすぐから10階にあるダイニングでサービスを担当し、ホテルは未経験ながらも1年でチーフへと昇格。その後結婚式の披露宴の担当なども任されるようになる。
 
「ホテルでの接客は初めてだったけど、相手も同じ人。その人がどうしたら喜んでくれるかを考えてやったらいいんじゃないかと思っています。」
 
接客をする上で大切にしていることについて尋ねると、山田さんはこう話してくれた。
ホテルに勤めるまではコース料理をほとんど食べたことがなかったという山田さん。入社後、お客様にどんな料理を提供しているのか自分が知らなければならないと考えた。まずは料理を食べてみることから始め、食材のことやコース料理の流れ、テーブルマナーなどについても、人に聞いたり本を読んだりしながら勉強。自分なりに噛み砕いて理解を深めていった。そんな努力が実を結び、現在は小中高生向けのコース料理を食べながらテーブルマナーを学べるイベントの講師もしている。
 
加えて山田さんが意識しているのは、TPOに合わせて接客の仕方を“演じ分ける”ことだ。例えば、ホテルリッチ&ガーデン酒田2階のレストラン「ガーデンナチュレふきのとう(※)」は、ホテル内にはあれど居酒屋のような少し砕けた空間作りがされており、制服もTシャツだった。そのため、「いらっしゃいませ」の一言を取っても、ホテル内の他の宴会場などとは雰囲気を変え、明るい声で接客するようにしていたという。
 
81歳と28歳、43歳も年の離れた二人のサービスマンだが、二人とも“お客様目線”、そして“演じる”ことを意識してきたという共通点があった。時代は変われど、サービスの根幹は目の前にいる人を大切にすることなのだろう、と感じさせられた。
 
(※)2021年11月現在、オーダー制レストランの営業は休止しています。

◇料理人もサービスも互いに認め・高め合える環境

「一般的に、料理の世界は料理人が絶対。しかし、その料理を生かすも殺すも、サービスの力量だと思ってくださる料理人の方々が庄内には多いように感じます。」
 
ここ庄内でサービスマンとして働く醍醐味について伺うと、鈴木さんはこう答えた。実際山田さんも、ホテルリッチ&ガーデン酒田の総料理長である佐藤徹さん自ら、サービスのことを気にかけて色々なことを教えてくれると話す。
 
庄内には、庄内一円の洋食店同士の交流を図ることを目的にした「庄内DEC(Development European Food Creation)クラブ」という組織が存在する。同組織は1989年(平成元年)に発足。以来30年以上に渡って様々なイベントが企画されているが、そのうちの一つに2年に一度行われる「シェフズディナー」がある。
 
このイベントでは各店舗から若手シェフ、そしてサービスマンなどのスタッフが集い、一般客を相手に調理から給仕まで行う。ただ単に料理人が腕を振るうだけでなく、同じ店のサービスマンが料理を提供するところまでがセットになっているということからも、庄内の料理人たちがサービスの重要性を感じていることがうかがえる。こうして各店舗がお互いに切磋琢磨できる土壌があるというのも、庄内で食に携わる仕事をすることの魅力の一つと言えるだろう。
最後に、食に携わる仕事に興味がある方へのメッセージをお願いすると、お二人はこう答えてくれた。
 
(鈴木さん)「庄内には、全国からお客様を集められる素材がたくさんあります。庄内はすごいところですよ。」
 
(山田さん)「高校を卒業したばかりの頃は、東京と庄内は別物だと思っていました。でも実際はあまり関係ない。今はこちらで美味しいものがあったらSNSなどを通して全国に広がる可能性がある。地元でもビッグな料理人やサービスマンになれるチャンスがありますよ。」
 
【店舗情報】
店名:ホテルリッチ&ガーデン酒田
場所:〒998-0834山形県酒田市若竹町1−1−1
アクセス:JR酒田駅から車で7分、日本海東北自動車道酒田ICから車で10分、庄内空港より車で17分
電話:0234-26-1115(宿泊予約)/0234-26-1343(ご宴会・ご婚礼直通)
駐車場:あり
駐車料金:無料
https://www.richgarden.co.jp/
 

ページトップ